一日の終わりに〜星野 源「ばかのうた」〜
どうしてインストゥルメンタルバンドSAKEROCKには、こうもすばらしいボーカリストがふたりもいるのだろう。
ひとりはハマケン。
在日ファンクのときのかれは、JBばりのシャウトとパフォーマンスでお茶の間の笑いをさそう勢いだが、そのじつ確かな演奏能力と熱い心意気におもわずうなってしまう。つまり爆笑しながら感動するという、めったにない感覚をあじわえるのだ。
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そして星野源である。
SAKEROCKのリーダーであるかれのソロであるが、すばらしいシンガーソングライターのアルバムになっている。
なにしろかれの声である。声だけでなく曲や歌詞や演奏まで含めてそうだが、それはかれがもともと持っていたというよりは、むしろ年輪のように積み重ねてきた枯れた味わいのようにかんじられて、わたしにはその重みが心地いいのだ。スッと寄り添うように入ってくる。わたしも年をとった。こんなうたを受け止めれることに、すなおにいいとおもえることに、心の底からうれしくおもってしまう。
特別なことはうたってない。内容もきわめて日常的なことだ。しかしどこの世界の表現者でも誰しもが気づくことだろうが、日常的なことを、誰も知らないやり方で表現することこそがもっともむずかしいことなのだ。なぜなら自分のリアルな日常は、まさに自分自身しか知らないことであり、しかしそれを自分のことばで語るやり方など、どこの本にも書いていない。つまり誰ひとりとして教えてはくれないからだ。唯一方法があるとすれば、正直に嘘偽りない自分自身と向き合うことであり、逃げずにそこで表現を叩きつけることであり、ひたすら自分のバケの皮をはがす作業をつづけるしかない。近道などないのだ。嘘偽りない自分のすがた。ハダカの自分と向き合うことは、それはすごくしんどい作業だ。しかしわたしはおもう。もうそういうところからでしか、ほんとうの表現は生まれないのではないのかと。
最近仕事が忙しくて、疲れすぎて逆に寝れないなんていってたら、ヒーリング音楽なるCDを貸してくれる人がいて、すがるように聴いてみたんだけど、やっぱダメだったよ。きれいすぎるメロディーに、安っぽい壮大さについてけなくて途中で止めたよ。
星野源の音楽はわたしにとって高級な音楽。一日の終わりに聴きたい音楽はわたしにはむしろこういう音楽だ。もうこういう高級な音楽にしか反応できなくなってるのかもしれなけれど。
真夜中。窓から真っ暗やみの夜をながめてたら、とたんに夜のはしっこから落っこちそうになって、あわてて寝床にかえってフトンをかぶった。はやく眠りが固まるように、ゆっくりゆっくり、何度も呼吸をくり返すしかないんだ。
”さびしいと叫ぶには僕はあまりにくだらない”
こんなやさしいフレーズに、グッとうたれてしまうのは、なぜなら、他ならぬわたしもそういう人間だからです。
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