やましいたましい

音楽を中心に服、本、生活の話題など

去年いちばん良かった音楽

 

三宅洋平 選挙フェス

もちろんメディアは伝えなかったし(NHKはちょっとやったみたい)、私が期待した音楽誌も、ロッキンオンもミューッジックマガジンもいっさいこのフェスを伝えなかったけど、これは去年ほんとにあった紛れもない事実である。なんでそんな言い方をするかというと、わたしの職場の人間、私のまわりの友達が、この選挙フェスのこと、三宅洋平の名前すらまったく知らないからである。毎日の日常の中にいると、わたしですら、はたしてあれはマボロシったのではないかと錯角に陥ることがあるがが、紛れもない事実である。そしてすばらしい音楽を聴いた瞬間でもあった。

2013年よかった音楽①

遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

 音楽といえば年々歳のせいか、激しい音楽は聴かなくなってきた。たまに懐かしい感じで棚から引っ張ることはあっても、もう激しいロックはほとんど聴かない。とは言っても形ではなく、尖がった音楽はいまだに好きで、むしろそういうものしか興味がなくなった。今まで培ってきた自分の耳を頼りに、引っかかってくるものだけグッと手を伸ばす。あまり時間がないからね。今年は音楽頑張りたいな。サドウスキーのBassが欲しい。買えるけど、なんか家族に気がひける。安くないからね。結局ヤフオクで中古のフェンダージャパンの古いのにするかも。ん~いやいや。

 

■2013年よかった音楽

1.Jose Jomes/No Beginning No End 

No Beginning No End

No Beginning No End

 

ホセのアルバムの中で一番いい。

一曲目から完全にディアンジェロを意識していて、ここまでそっくりだと逆に反感を買う人もいそうだけど、よく聴くと全然違う。ディアンジェロをアプローチしようとしたら、こういうやり方しかないのかなという感じ。逆にディアンジェロの凄さがわかるアルバム。このままディアンジェロの「VOODOO」を聴いて「やっぱこっちだな」って聴き方もいいかも。なんか褒めてないけど、でもすごくいいですよ。ピノ・パラディーノとクリス・デイヴのリズム隊(わたしはクエストラヴ派)、ディアンジェロ周辺のプレイヤーで固めた布陣は見事な雰囲気を出してるし、ブラックな感じはないけどオシャレ。新譜の中だったら去年かなり聴いたアルバムです。レコード聴ける環境なら是非アナログで聴く方が良さそう。そんなアルバムです。わたしもアナログにすれば良かった。いや、買うかな。

うらやましかったんだと思う。

遠くの空で割れるようなカミナリの音がして、窓の外をみたら随分と空が黒ずんでいた。向こうはだいぶ降ってんのかなと思っているうちに、みるみるこちらの空も曇ってきて、一気に大雨になった。夏の空は変わり易い。急いでベランダに出しておいた鉢をしまいこむ。洗濯物を確認したら、こちらは妻がバイトに行く前に取り込んでおいてくれてみたい。雨足は強いのですばやく窓を閉める。そしてすかさず冷房のスイッチだ。なんとなく節約をしようと身についているからか、なるべく冷房は付けないでおこうとしているが、誰に決められた訳でもない。でも本当は夏は出来るだけ窓全開でいきたい。うちのアパートは通りに面しているので、車が通るとうるさくて、テレビの音が聞こえなくなるからイラっとくることがあるけれど、時々聞こえてくる誰かの会話や、遠くの方で電車が通る音はなんとなく心地いい。外の音が私の個人的な生活の中に混じってくるのがいいのだ。だから出来るだけそうしたい。
いつだったか、夜中に窓全開にしてた時、どっかのオヤジかだれかが路上に唾を穿く音が聞こえて、妻が「きたねーな、いっつも決まったオヤジがやるんだよ」と何故か知ったふうなことを言ってた。ある夜なんかは酔っぱらっているのか大声でうたっている人がいて「へたくそー」と妻が罵っていたが、わたしはあまりにも気持ちよさそう歌ってるのに逆に感心してしまった。たぶんグレイかなんかの曲だと思う。わたしはグレイはあまり知らないが、そんな私でも耳にしたことがあるから相当有名な曲だと思う。完全になりきっていて、クセだけは捕まえていたが、たいがいはヘタクソだった。妻は笑っていたが、なんだか私はうらやましかった。ここまで相当入れ込んでる、相当聴きこんでるんだろう。好きなんだなと。あの夜、大声でうたう彼の脳裏には相当多くの聴衆がいたのだろうか。どこまでも届かせようとばかりの彼の歌声は近所中響いていた。そうか、感心していたのではない。うらやましかったのだと思う。


ベストラッピン 1996-2008

ベストラッピン 1996-2008


ハイバイ「て」の感想

池袋 東京芸術劇場にて
表現というものは、何か創造的なものに自己投影して感動を得たりするものではという認識をブッ飛ばすほどのリアル感。ほんとにそのままの日常がそこにただゴロっと転がっているものを観せられた衝撃。こんな表現観たことない。圧巻の時間でした。
わたしは決してDVの家庭に育ったわけではありませんが、あの不条理な感覚は思い当たる節もあり、劇中涙をを堪えるのに必死でした。「手」というものは一つ一つの指が、絆であれ、憎しみであれ、決して離れることが出来ない家族の象徴。何一つ解決しないまま終わる感じもリアルさがあっていいと思いました。たとえすっきり終わったところで、このわたし達の日常は続けていかなくちゃいけない訳ですから。
大袈裟じゃないく自分がどうして自分なのかが分かった気がした。ほんとにみたくないものをみせられた感もありましたが、これ必要だったかも。一緒に観にいってくれた嫁はいまだに感想を言いません。何となく聞いてみても言葉が返ってこない。「泣いたんだよね〜」といったら「そうなんだ〜」と驚いてました。やはり合う合わないってのがあるかも知れません。基本的に笑える要素もあるので、反動で思いっきり笑ったり、感情が乱高下する不思議な体験でした。その感覚は悪くないです。
私小説ならぬ私演劇といわれてるみたいですが、ここまでそのままの日常がそのままみせつけられる表現は、わたしにははじめてでしたし、それを表現として成り立たせてるのがハイバイの凄さだと思いました。だって日常ってつまらないじゃないですか、たいがい。



本気でやって才能があれば勝手に浮びあがってくるよ〜大森靖子(おおもりせいこ)というリアル〜






日常を本気で見つめてると、どうしてもはみ出していかざるおえない。
椎名林檎は狂気にあこがれる才能のある常識人だったけど、この子はどうだろう。
ただ本気でやってるだけのような。
ちょっとアングラっぽいけど、あとは完璧。

こういうの求めている若い奴らがいっぱいいるよ。
もしかしたらスゴイことになるかもね。


魔法が使えないなら死にたい

魔法が使えないなら死にたい

 

去年よく聴いた音楽(とか読んだ本)

ずいぶん遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。やっとひと段落。

なんだか慌ただしく駆け抜けた感のある去年。前半はスティーリーダンばっか聴いてた。家で仕事しながらとか、車の中とか、本を読みながらとか、微妙に音量のバランスをとりながら3、4枚をとっかえひっかえしながらほんとよく聴いた。特に再結成以降の(お互いのソロ含めてね)ものに限ってだけど。ガウチョとか彩(エイジャ)なんかは逆にぜんぜん聴いてない。THE ROYAL SCAMなんかは、黒っぽいリズムだし、キャッチーだからいけるかなと思って聴いてみたら途中であきて止めてしまった。なにか音楽的な高みに登ってやろうであるとか、緊張感であるとか気合いがガンガン伝わってきて、なんだか疲れてしまったのだ。2000年以降のスティーリーはいい。なんか余裕な感じである。「適当に聴いてくれよ、こっちも気楽にやんだからさ」という雰囲気が伝わってくる。それでいて結構挑戦的なこともやってる。余裕な感じでスゴイことをやる。なんとも大人なかんじである。わたしの思う大人とはそういうものである。あんまりこういう評価を他では聞いたことないけど。




Morph the Cat

Morph the Cat

サーカス・マネー

サーカス・マネー



わたしにとっての去年は、むしろ好きな作家との出会いがたくさんあった年だった。まず年初めに全集が出るってことで話題になって手にとった古井由吉が良かった。良かったとか軽く言えないくらいの文豪みたいですけど。何十年も前の作品なのにまったく古さがなく、情景や心情を描写するきれいな文章に惹きこまれました。あと堀江敏幸という作家との出会いがおおきかった。わたしは音楽は、結構聴いてきたつもりなので、自分の肌に合う音楽は重箱の隅をつつき過ぎるくらい分かってるつもりだけど、作家はあまり知らない。でも中にはそんな作家がいたらいいな、いつか出会えたらいいなと思っていたら、まさにそういう作家でした。突飛なことは何も起こらないところとか、一周まわってはじまってる「終わった観」とか、文章の雰囲気、佇まいとか、カラーは違えど敬愛してやまないレイモンドカーヴァーの世界観に似てるような気がしてちょっと震えた。で極めつけは幸田文。かなり古い作家で、幸田露伴の娘さんなのは知っていて、たまにちらほら耳にはしてはいたものの、全く読む機会はなかったが、職場の人の勧めで読んだ「台所のおと」にびっくりした。まず表題作の端正できれいな文章、真摯な姿勢に感銘を受け、「祝辞」には不覚にも涙してしまった。ちょうど電車の中だったので、本を読みながら突然泣き出すおじさんはなんともカッコ悪いと思い、ガマンするのに必死だった。乗り換えの北千住の駅のトイレにこもり、あらためて盛り上がったフレーズだけ何度もリフレインしながらまた泣いた。わたしには久しぶりのいい読書体験だった。


雪沼とその周辺 (新潮文庫)

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

台所のおと (講談社文庫)

台所のおと (講談社文庫)



去年の後半は、jazzman recordsの新作のコンピ"jukebox manbo"をよく聴いた。今回のは49s〜60sあたりの古い音楽のコンピで、”マンボ”とか、ジャケットの雰囲気からどうだろうと思ったけど、中身はかっこいいビンテージ感バリバリの踊れる音楽満載で、このシリーズでいちばんいいんじゃないかな思った。ふざけた音源もちょっと入ってるんだけど、すばらしいですよこれは。しかしいつも思うんだけど、この時代の音楽のビンテージ感ってのはいったいなんだろう。音が流れた瞬間から世界観をトップスピードでガラリと変える力をもっている。録音のクグもった雰囲気からして、それがけして理由ではないだろうが、何気なく部屋でかけても部屋の雰囲気がガラッとかわりますからね。不思議な魅力です。これだけの貴重な音源をひとりで集めようとしたって全く無理なわけで、ほんとにjazzman recordsいい仕事してますよ。サンプルネタもガンガンあります。サイコ‐ですよ。これからも期待してます。




JUKEBOX MAMBO - Rumba and Afro-Latin Accented Rhythm & Blues 1949-1960

JUKEBOX MAMBO - Rumba and Afro-Latin Accented Rhythm & Blues 1949-1960




そして純粋に新譜として去年良かったのは、ケンドリック・ラマーもフランク・オーシャンも良かったけど、わたしとしてはやっぱり夏に出たムーディマンの新作EP、これ良かった。これベスト。もしサンプラーをレディメイドとするならば、いまムーディマンがやってることは、ポップアートというかネオダダに近いんじゃないかな。どっかの雑誌にはムーディマン史上もっともロマンチックな作品と評していたが、なるほどなと思う。夕暮れ時に似合いそうなロマンチックなブラックマシンミュージックである。またしてもの今どき驚きのアナログ限定発売で、いまレコード屋に行ってもどこにも売ってなく、わたしも泣く泣くyoutubeを繰り返し再生するだけですが、ぜひいつか手に入れたい。”ムーディーマンの新作は見つけたら迷わず買う”という、この誓いをあらたに、この夕暮れ時にちょっとだけしんみりとするのであった。