やましいたましい

音楽を中心に服、本、生活の話題など

バカのしびれ〜The ピーズの新作ベストによせて〜

アルキネマ

アルキネマ




徹頭徹尾のリアリズム。ひたすら「わたし」という化けの皮を剥ぐ作業。これこそがオリジナルに辿り着く唯一の方法だと謂わんばかりの表現の追及。どこまでもダメな自分。逃げたい、辞めたい、そしてついにそれすらも飽きたという。ただ、ハルはいつだって表現するときは、おのれを正直に独白するという姿勢からはけして逃げなかったと思う。それだけにわたしはピーズの音楽を聴くと、どんな軽いかんじの曲でもなにか痛いたしさ感じてしまう。切なくなる。そしてけっきょく愛しくなる。
「わたしはいつの間に、こんなかっこばかりのダサい人間になってしまったのだろう」「けっきょくわたしの本音というものは、じつはただの建前だったのではないか」
ピーズの音楽を聴いてるとそんな思いが襲ってきて、自分がはずかしくなることがある。中身はほんとにシミッたれたダサい音楽である。ただ、毎日満員電車に揺られ、週末は飲んだくれてボロボロになって帰ってくるわたしの日常を、わたしのこの現実の生活の心情を奏でてる音楽は他ならぬピーズである。
ここ最近の活動のベストアルバムが発売された。年齢をかさねて現実の深刻さはさらに増してる。20代そこそこから、彼らは誰もかなわない孤高の存在だったが、さらに純度は増している。歌詞なんかもう、そこら辺の文学づらして芸術家気取りの詩なんか軽くなぎ倒す勢いだ。高級な音楽。ピーズのイメージにはとても似合いそうな言葉ではないが、わたしにとってThe ピーズの音楽はそういう音楽である。





しびれ ねぼけ トロトロ
西の月と 沈んでこう

慣れたもんだ 笑い方 溺れ方
浮かび方

楽しいことばかり考えた
眠たいまで歩いた

ハナたらし よだり アタマ冷やし
何ちゅうツラで 帰れる日々

サッサと歩く もう手ブラだし
サッサと生きる もう平らだし

無理な穴掘りは あきらめた
死なないように 生きた

バカの知恵 バカのしびれ
しびれ・・・

しびれ ねぼけ アタマ冷やし
西の月と 沈んでこう

楽しいことばかり考えた
明けない夜を生きた
眠たいまで歩いた
          〜バカのしびれ〜