やましいたましい

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jose james(ホセジェイムス)「BLACK MAGIC」

BLACKMAGIC (BWOOD041CD)

BLACKMAGIC (BWOOD041CD)

jose james(ホセジェイムス)新作。すばらしい。いろいろな意味でまさに今のブラックミュージックのありかたを問うている作品だとおもいます。今や旬のブレイクビーツ系アーチスト(そういわれつづけてもう何年たった)フライングロータスが関わっていること。それだけじゃない。最近のお手軽R&Bよりは、よっぽど黒っぽい音を出し続けているデトロイトハウスの雄”ムーディーマン”やダブステップ界の巨頭”ベンガ”など、わたしが好きだったり、とんがってるとおもうトラックメーカー陣をここまでプロデューサーとして集結させてる、ホセジェイムスなる男。前作はオーソドックスなジャズボーカル作品だったのにたいして、今回はかなりシフトチェンジをしてきた。自身がおもう旬なトラックメーカーと組むことで、まさに”今”をかんじさせる作品を作ってきた。ジャズボーカルといっても、自身主導の曲は、むしろディアンジェロ以降のR&Bをおもわせる曲や、スティーリーダンみたいな曲もある(これもまたすばらしい)。でもやはり特筆すべきは先の豪華プロデューサー陣との曲。実にみごとに仕上がっているものばかりで、わたしはこれがある意味において、2010年の今におけるブラックミュージックの最先端ではないかとおもいます。おそらくそれはそんなに間違ってはいないとおもう。
国道20号線を車を走らせながら、この音楽を聴いている。さびれたラブホの看板、目立ちたいだけのパチンコ屋の建物。その向こうに自然の山々が見える。そのどこにでもあるような街中の風景に、フライングロータスの分裂症的なまでにぶっ壊れた音像や、ベンガの作り出す、時に神経症的なまでに刻まれたビートが、まるでこの風景の為につくられた音楽のように、何の違和感もなく存在していることに気がつきおどろいてしまう。
そんなおもいを目の当たりにしているとわたしはなぜか、われわれは、もうとっくに何かとりかえしのつかないあやまちを犯したまま、もう戻れない相当なところまで来てしまったような、そんな気分にもなってくる。
その気分は、ふしぎとおもいのほか、ここちよかったりするのだ。