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日本人がつくる洋楽〜LITTLE CREATURES の驚愕の新作について〜

このあいだ書いたKIMONOSのアルバムのを聴いてる時、じつは音の感触としていちばん近いとおもってたのは、2001年にだしたLITTLE CREATURES (リトルクリーチャーズ)の傑作アルバム"FUTURE SHOCKING PINK"だった。もう10年も前の作品で、出た当時もそうとうすごいとおもったが、そうおもうとさらにすごいとおもう訳で、そのLITTLE CREATURESが久しぶり(約5年ぶり)に新作を出すということで、しかも今回はロックな作品になってるということで、「もしかして!」と期待してたわけですが、予想通りというか、すばらしいアルバムですよこれは。さまざまな音楽の旅をしてきたLITTLE CREATURESだけに、ふつうにありきたりなロックはないだろうとはおもってましたが、とんでもない怪作を作ってきた。前作が渋い作品で、「このまま枯れてくのかな」とおもっていただけに、わたしはなんかうれしいっす。かなり攻めてます。かなり大人の音楽。大人のロックです。わたしはFUTURE SHOCKING PINKが最高傑作だとおもっていましたが、どうやらそれを越えそうです。どうやらというのは、ちょっとよくわからない。分からないぐらいわたしには新鮮に響いてて、例えがおもい浮かばない。わたしにはちょっと聴いたことないロックです。キャリア20周年。いつもすばらしい作品を出し続けてはいるものの、ここにきての、まだあたらしい音楽を作ってやろうという、 しかも気負ってない、すごくシャレたかんじの姿勢に、わたしは感動すらおぼえますよ。かっくいー。






ギター、ベース、ドラム、キーボードという、きわめて基本的な編成なのに、ここまで新鮮な音楽スタイル。あらぬロックの方程式をつくってくるのはまさに驚愕。でももうわたしは知っている。最初は耳なじまないメロディも、展開も、やがてメロディが浮きでるようにわかってきて、いずれクセになることを。LITTLE CREATURESをじつに中毒性のある音楽をつくる人たちなのだ。しかも今回はメロディがより際立っている気がする。とにかくこの"The Sand Cage"にピンときたらオススメだし、いままでありきたりなロックに飽きあきしてる人は要チェックです。この"The Sand Cage"のテンションのまま最後までいきます。なんかガチャガチャしてるけど、すごくエレガント。そう、エレガントって言葉がすごく似合ってるような気がするな。ふだんあんま使わないけど。
コーネリアスがあれほど世界で受け入れられ、評価されているのであれば、LITTLE CREATURESだってもっと評価されたっていいとおもう。知らないだけだな。ここまでクオリティ高い音楽を作っていると、日本の片隅でこっそりやってるのがもったいないし、もしかして日本人じゃない方が彼らのためにはよかったのかなと、あらぬおもいも抱いたりしたが、いやいややはり、これは日本人だからこそ作れた音楽ではないか。と、おもい直したりもしている(どうもずいぶん勝手に)
もう10年ほど前だったか、世界中のいろいろな音楽がいちばん集まってるのは、じつは日本の渋谷のciscoではないかといわれてた時代があった。もうそのciscoも今やとっくにないけど、そんな時代にいちばん多感な時期をすごした彼ら。わたしも同世代。むさぼりつくようにいろんな音楽を聴いてきたような。そしてここにきてのLITTLE CREATURESのこの音楽の成果は、良い意味での雑食性を兼ね備えた日本人だからこそ出来たのようにもおもいたくもなるのだ。
もう20年ほど前、LITTLE CREATURESが1stの"VISITA"を出した頃、何かのFM番組で、DJが「これこそ日本人ならではの、日本人が発音のすべき英語ですよ」と彼らを紹介してた。わたしは英語の発音にはあかるくないが、こうはおもう。これこそ日本人がつくる洋楽、作るべき洋楽なのではないかと。

どうかこの文章が、賛辞ばかりの、ただのきもち悪い文章として伝わることだけはないように。それだけはねがうよ。もしそうだったら失礼だからねLITTLE CREATURESに。せっかくすばらしい音楽を作ってるだけに。やはりそこらへんは切に願う。




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