やましいたましい

音楽を中心に服、本、生活の話題など

おどるシンガーソングライター



「everyhome」からはじまった、鬼束ちひろの怒涛の復活劇。以前と違って驚いたのは、彼女の本気度からくるのだろうか、何とも危うい感じである。何って、ほとんどまばたきをしないのである。草間彌生か、はたまた岡本太郎か。ひいては昔のピカソの映像にもみえたあの、見据えたまま動かないあの目の感じである。
そしてこの「X」という曲である。このプロモでの本人自身のパフォーマンスは、撮影当日に初披露された鬼束自身が考えた、全くオリジナルだという。撮影当日、現場ではきっとこんな会話がなされていたはずである。

助監督「ほんとに大丈夫ですかね」

 監督「本人がやるっていってんだから、仕方ないだろ」

助監督「でも、まだだれも見てないんですよ」

 監督「じゃあダメだっていうのかよ!」

そうこうしてるうちに、全身黒マントでおおった鬼塚本人が登場、なぜか全身を黒マントでおおっている。

 監督「だ、大丈夫ですか、鬼束さん」

 鬼束「・・・・・・・・」

 監督「ま、まぁいいか、スッ、スタートッ!」

曲の前奏が始まった瞬間、おおっていた黒マントをおもむろに放り投げる鬼束。空高く舞い上がる黒マント。なぜか助監督の頭の上にまとわりつくように落ちるようになっている。しばしあばれる助監督。そして鬼塚の迷いのない、鬼気迫るオリジナルパフォーマンスが次々に繰り広げられていく。もちろん一発OKである。

この「X」という曲の後発売されたいくつかのシングルを聴くにつけ、比較的メロウな曲ばかりなので、アルバムはいろんなタイプの曲が入ることになるのが予測される。しかし願わくば、いっかいその得意のメロウなバラードはおいといて、こういうヒリヒリとした曲ばかりで構成されたアルバムを聴いてみたいのである。プロデューサーはスティーブアルビニで(ここ絶対)。きっとものすごいロックなアルバムが出来るんじゃないかとおもう。なぜなら、いちばんキレてた時代のPJハーヴェイを想い起こすような、日本人アーティストなんていると思わなかったからだ。ちょいびっくりした。
でもそんなことは、現実にはないんだろうな。ノンコマーシャルな骨と皮だけのアルビニサウンドは、本人も望まないだろうし、だいいち、日本じゃ全くもって売れそうもないからである。