やましいたましい

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わたしのおもひでのバンド

前回の続き
その頃のわたしのおもひでのバンドといえばペイヴメント。Lo-Fiブームの立役者。Lo-Fiブームはこのバンドからはじまった。
さいしょに聴いたときは、おもわず爆笑した。あまりの演奏のヘタさ加減に。うたい始めて3秒でうらがえっちゃう声に。しかし曲が終わるころには、ツメが潰れるほどコブシを握り締めていたよ。彼らはセンスしかない。むしろセンス以外なにもない。テクニックにおぼれるとセンスが摩耗するんだよ。逆にオレ達はセンスだけでここまで出来るんだよ。といわれているような気がした。だまってしまった。わたし達は何もいえずだまってしまった。ただ、どんでもないバンドが出てきたぞという共通認識のもとに。
その日以来、しばらくの間、我々のバンド内では「練習するのやめようぜ」という言葉が合言葉のように交わされていた。
ペイヴメントはロックを解体し、実情を曝け出すことによって、HIPHOPが市民権を得た90年代当時、唯一鳴らすべきロックというものを鳴らしたんだとおもう。ヘロヘロの演奏、よれたメロディ。はずれていくボーカル。ライブもだただらやってきて、だらだら演奏して、だらだら帰る。そのもの全てが、ガチガチの商業化したロックへのアンチテーゼだったし、怒涛のごとく勢力をましてきたHIPHOPに対抗する唯一の手段だったんだとおもう。そしてそれは当時の我々には十分刺激的であったし、いま聴いてもけして間違ってはなかったようにおもう。
レディオヘッドのトムヨークが嫉妬し、ギターのジョニーがいまだにフェイバリットに挙げるバンド。わたしが、シューゲイザーとか、昨今の若手のバンド達に、けして悪くはないのだが、いまいちピンときてない理由は、じつは90年代にペイヴメントというバンドを経験したからじゃないかとおもう時がある。どの若手バンドを聴いてもうしろにペイヴメントの残像がちらついて、亡霊のように語りかけてくる。もしかしてあの時代、あそこでロックは終わったんじゃないか。終わってしまったんじゃないのか。オレ達が終わらせたんだよ。そんな気分に、どうしてもなってしまうのである。



Pavement/Crooked Rain, Crooked Rain



わたしがこのペイヴメントからいちばん受け取ったのは「自由」という感覚だ。これってもしかして、わたしがロックを聴くときにいちばん大事にしてた事だったのではないか。そうおもうと、なにか一つ答えがみえたような気がしてね。