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匂いを盗む人たち〜NERDの新作「nothing」について〜

プロデューサーチーム”ネプチューンズ”のプロジェクトNERDの4作目
これおもしろい。NERDはなんだかんだいっても、今まで出したアルバムみんな持ってるんだけど、これいちばんいいかも。ブラックミュージックmeetsドアーズ。そんな雰囲気もある。基本的にファンクっぽい踊れるかんじの曲だけど、音がおもしろい。ブラックミュージックとはこうあるべきというような、退屈なルールには縛られてない。その姿勢だけでもいいとおもうけど、それをちゃんとカタチにしてきてる。しかも今回のアルバムは、1度作ったアルバム一枚分の27曲を、どれも良い曲だけど”ばっちりじゃない”って理由でボツして、また一から作って完成させたらしい。いったん白紙にもどす。だからアルバムタイトルも”Nothing”。やっぱりネプチューンズにとってNERDは特別なプロジェクトなんだな。

無からなにかを生み出すのは可能だって信じてる。クリエイティヴになにかを表現したりアートを作り出す者にとって、まずコップの水を捨てることが最初のチャレンジなんだ。コップが空になればまたそのコップを満たせるかどうか、過去の功績に頼ることなく真新しいものを生み出せるかどうか……その問いが僕らの原動力になったんだ」——CHAD HUGO


このチャドの発言に100%同意するってわけではないが、その姿勢がないとあたらしいものが出来ないのは明白だ。
例えばグランジブームの時、みんなこぞってカートコバーンが使用していたジャガージャズマスターなどのギターをもったり、ジミヘンのようなサウンドを出したくてファズやクライベイビーなどのエフェクターを使う。TR-808のドラムマシンが流行れば、過去の遺物であるはずのものが相当な高値で中古市場に出回る。TB-303のシンセベースもしかりだ。そして、それらを使ってわれわれはそれなりにかっこいいサウンドを奏でるのだろう。それなりに。しかしそれは、カートコバーンやジミヘンが築き上げたセンスの「保証」の中でやってるだけともいえるし、すでに「かっこいいと」とされているサウンドの中で表現する安直な方法だともいえる。扱う者がほんの少しでもセンスがあれば手軽にグットサウンドは奏でられるだろう。なにしろ後ろには、過去の偉人達が築き上げた確固たる「保険」が効いているのだから。
だから世の中似たような音楽であふれているんだろう。いちばん楽な方法だし、まず大外しがない。いわゆる手堅いってやつだね。
「コップの水を捨てること」
チャドがいってることは、まずそれらの安直な方法論を捨てるということだ。
やっぱり音楽メディアもほんとよくないとおもうよ。古くはストラングラーズも、シャーラタンズも、インスパイラルカーベッツだって、その音楽にオルガンが出てくると、「ドアーズ風の〜」なんて、すぐドアーズの名前が引き合いに出される。ハモンドドアーズになっちゃってる。音楽なんかちっとも似てないんだけど。
NERDはオルガン使ってないよ。でも「HELP ME」なんかドアーズっぽい。ダフトパンクがプロデュースした「Hypnotize You」はエレクトロなピコピコサウンドなのにどうしてスライっぽい匂いがするのだろう。
匂いを盗む。本当にセンスがある人たちは、先に述べた安直な方法論などはけして頼らず、何かしらの「匂い」であるとか、「アティテュード」、そこでかんじる「パッション」なんかを盗み、自分なりのサウンドに消化して表現するこ人たちなのだとおもう。それが、それこそが才能っていうことのなのだとわたしはおもう。
NERDの新作も昔ほどあまり話題になってないし、そもそも洋楽じたい、ぜんぜん売れてないって話も聴く。CD屋に行ってみても、いまだにマイケルジャクソンばっかだしね。まあマイケルジャクソンもすばらしんだけど。
常にあたらしいサウンドに挑戦し、ポピュラリティあふれる音楽の作り続けることがいかに大変なことか。しかも今回は全体で38分とサクっと仕上げてきてる(輸入盤)。ちょっと物足りない。だからついまた最初から聴いてしまう。そしていつのまにかハマッていくってかんじ。ファレルのしゃがれ声に魅力にね。
ブラックミュージック側からのロックへの回答のような(レニークラビッツはたんに擦り寄ってるだけですから)。あんまり聴いたことのないおもしろい音楽を聴きたかったら、NERDは聴くべしです。





このなんですかワケ分からなさ!「いったい何なんですか」っていうぐらいの異様さ。
やっぱおもしろいわ。