やましいたましい

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コンコンコンプレックス

人があるものごとに執着してしまうということと、自身の持つコンプレックスとは、以外に深い関係があるのではないかとおもう。例えばわたしがよく行くおしゃれ古着屋のオーナーとの、今日の会話の中でこういう話が出てきた。
「わたしは背が小さいもので、着たい服がいつも大きいサイズしかなくて着れなかったんですよ」
聞けばその古着屋のオーナーの、洋服好きの原点がそこにあるという。かっこいいあの服が、おしゃれなあの服が、いつも大きなサイズで着れない。着ることが出来ない。でもなんとしてでも着てみたい。そのあこがれが、彼の洋服への執着をよりいっそう強くしていく。わたしは、つくばいち、いや、そのセンスは中目黒や代官山にある古着屋に匹敵するとおもっているオーナー店長さんの話だけに、よりいっそう興味をそそがれた。わたしは咄嗟に「ああ、それよく巨乳の子がサイズがでかいとかわいいブラがないからこまる〜っていう話と似てますね」と言おうとおもったが、例えがあまりに下世話なのでやめておいた。そのオーナーは結局、好きな服が着れないという苦い経験、でも着てみたいという願望からどんどん服の世界にのめりこんで行ったのだという。そしてこう結んだのだ。「もし、わたしがもうちょっと背が高くて、あの時、簡単に着たい服が着れていたとしたら、今頃古着屋なんかやってなかったかもしれないですね」
わたしはこのことを聞いたときになるほどとおもわず膝をたたいた。人がコンプレックスに裏打ちされ、ある物事に執着していってしまう。そして時にはその人の人生の多くを決定してしまう。そしてわたしはなぜかいやな気持ちにもなった。なぜなら、このオーナーのような経験が、もしかしたら、わたし自身の記憶のどこかにあるからなのかも知れないと感じたからだ。わたしは自分自身の人生を、常に自分自身の判断で決定してきたつもりであったが、このことですら揺らいでくるではないか。何かとてつもなく憂鬱なきぶんになりそうだったので、ここを掘り下げるのはやめとくことにした。
今では安売りのごとく使われるようになった”トラウマ”という言葉だが、医学的な意味で言うと、精神的外傷といって、おもいっきりわかりやすい例でいうと「太った容姿を気にして身体を隠す服ばかり着ている子が、苦労のダイエットの末、見事理想の体型を手に入れた途端にこんどは露出狂なってしまう」といったような、抑圧されて出来た心の傷が、後の人生におもわぬ形で影響があらわれてしまうという病気のことだが、まあ病的な意味でなければ、先のオーナーの話も一種のトラウマってことになるのかもしれない。けどわたしは幸せな結果が出てたり、病的なことにならなければ、それはそれでいいのではないかとおもった。むしろひとつの物事を成し遂げるためには、ある種異常なまでの執着心ってのは必要不可欠ではあるし、もしかしたらある程度のコンプレックス的なものは、ベースとしてはいるのかもしれない。もっとおっきく言っちゃうと、みんな大体コンプレックスなんてあるもので。大なり小なりの心の傷の継ぎはぎで人生って出来ていくんだったりして。まあどうであれわたしがいちばんこの古着屋で気に入っているところは、置いてある服のセンスもさることながら、見事なサイジングのものばかりが置いてあるところなのだ。そこはほんとに感心してしまう。アメカジテイストよろしくな、よくある古着屋ではなく、きれいめな服を、いまの日本人向けのジャストサイズなものをだけよくこうも見つけて来るなぁと。
わたしはオーナーにいう。
「見事なサイズのものばかりですねー(関心)」
「いやぁ〜、そこはいちばんこだわっているところなんですよ。どんなに非効率だといわれようが、私はジャケットに関しては、必ず袖をとおして着心地を確認すんです」
「やっぱり買い付けの時のチョイスのセンスがいいんじゃないですか」
「うれしいな〜、確かに100着みて一着あるかないかぐらいこだわってますからねぇ」


おお、オーナーのってきてる。こうなるとわたしも乗ってきてる。人の幸せそうな顔をみるのはなんともいい。わたしまで楽しくなってくる。もうこうなったらもっとほめほめ攻撃で心地よくしようじゃないか。ほめ渡部でも見習って。もっと何かないか。


「アメカジアメカジしてないところいいんですよ。中目黒や代官山にある古着屋みたい」
「そこなんですよー!!そのアメカジっぽさをはずすところがむずかしいんですよ〜」
「しかも安い。じつはここいちばん大好きなところですけどね。都内でいったらところによれば倍以上はしますよ」
「お客様の喜ぶ顔がみたくて、採算度外視でやってます!!」


ぞくぞく入ってくる客を尻目に、わたしたちの端からみればきもちわるい会話は店内中ひびきわたった。のりに乗ったオーナーは、近くに陳列してあったネルシャツをさわりながら自分のおもいをかみ締めるように語った。


「わたしなんかは、もうさわっただけで質はもちろん、だいたいどの年代の物なのかおおよそわかりますからね!(自信)」


ほぉ〜それはすごい。わたしは感心して、咄嗟に「麻雀も達人になると盲パイとかできるようになるっていいますからね」という例えをおもいついたが、あまりに安易な例えに、言うのはやめておいた。これをいったら、なにかこれまでのすべてがぶち壊しになるような気がしたのだ。








まあこのながれで、ぜんぜん関係ないんですけど、なんか今回やたらコンプレックスという言葉が出てきたので
四星球で め狐 コンコンコンプレックス



真心チルドレンがついに出てきましたね。

ゆとり教育の星

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