やましいたましい

音楽を中心に服、本、生活の話題など

去年よく聴いた音楽(とか読んだ本)

ずいぶん遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。やっとひと段落。

なんだか慌ただしく駆け抜けた感のある去年。前半はスティーリーダンばっか聴いてた。家で仕事しながらとか、車の中とか、本を読みながらとか、微妙に音量のバランスをとりながら3、4枚をとっかえひっかえしながらほんとよく聴いた。特に再結成以降の(お互いのソロ含めてね)ものに限ってだけど。ガウチョとか彩(エイジャ)なんかは逆にぜんぜん聴いてない。THE ROYAL SCAMなんかは、黒っぽいリズムだし、キャッチーだからいけるかなと思って聴いてみたら途中であきて止めてしまった。なにか音楽的な高みに登ってやろうであるとか、緊張感であるとか気合いがガンガン伝わってきて、なんだか疲れてしまったのだ。2000年以降のスティーリーはいい。なんか余裕な感じである。「適当に聴いてくれよ、こっちも気楽にやんだからさ」という雰囲気が伝わってくる。それでいて結構挑戦的なこともやってる。余裕な感じでスゴイことをやる。なんとも大人なかんじである。わたしの思う大人とはそういうものである。あんまりこういう評価を他では聞いたことないけど。




Morph the Cat

Morph the Cat

サーカス・マネー

サーカス・マネー



わたしにとっての去年は、むしろ好きな作家との出会いがたくさんあった年だった。まず年初めに全集が出るってことで話題になって手にとった古井由吉が良かった。良かったとか軽く言えないくらいの文豪みたいですけど。何十年も前の作品なのにまったく古さがなく、情景や心情を描写するきれいな文章に惹きこまれました。あと堀江敏幸という作家との出会いがおおきかった。わたしは音楽は、結構聴いてきたつもりなので、自分の肌に合う音楽は重箱の隅をつつき過ぎるくらい分かってるつもりだけど、作家はあまり知らない。でも中にはそんな作家がいたらいいな、いつか出会えたらいいなと思っていたら、まさにそういう作家でした。突飛なことは何も起こらないところとか、一周まわってはじまってる「終わった観」とか、文章の雰囲気、佇まいとか、カラーは違えど敬愛してやまないレイモンドカーヴァーの世界観に似てるような気がしてちょっと震えた。で極めつけは幸田文。かなり古い作家で、幸田露伴の娘さんなのは知っていて、たまにちらほら耳にはしてはいたものの、全く読む機会はなかったが、職場の人の勧めで読んだ「台所のおと」にびっくりした。まず表題作の端正できれいな文章、真摯な姿勢に感銘を受け、「祝辞」には不覚にも涙してしまった。ちょうど電車の中だったので、本を読みながら突然泣き出すおじさんはなんともカッコ悪いと思い、ガマンするのに必死だった。乗り換えの北千住の駅のトイレにこもり、あらためて盛り上がったフレーズだけ何度もリフレインしながらまた泣いた。わたしには久しぶりのいい読書体験だった。


雪沼とその周辺 (新潮文庫)

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

台所のおと (講談社文庫)

台所のおと (講談社文庫)



去年の後半は、jazzman recordsの新作のコンピ"jukebox manbo"をよく聴いた。今回のは49s〜60sあたりの古い音楽のコンピで、”マンボ”とか、ジャケットの雰囲気からどうだろうと思ったけど、中身はかっこいいビンテージ感バリバリの踊れる音楽満載で、このシリーズでいちばんいいんじゃないかな思った。ふざけた音源もちょっと入ってるんだけど、すばらしいですよこれは。しかしいつも思うんだけど、この時代の音楽のビンテージ感ってのはいったいなんだろう。音が流れた瞬間から世界観をトップスピードでガラリと変える力をもっている。録音のクグもった雰囲気からして、それがけして理由ではないだろうが、何気なく部屋でかけても部屋の雰囲気がガラッとかわりますからね。不思議な魅力です。これだけの貴重な音源をひとりで集めようとしたって全く無理なわけで、ほんとにjazzman recordsいい仕事してますよ。サンプルネタもガンガンあります。サイコ‐ですよ。これからも期待してます。




JUKEBOX MAMBO - Rumba and Afro-Latin Accented Rhythm & Blues 1949-1960

JUKEBOX MAMBO - Rumba and Afro-Latin Accented Rhythm & Blues 1949-1960




そして純粋に新譜として去年良かったのは、ケンドリック・ラマーもフランク・オーシャンも良かったけど、わたしとしてはやっぱり夏に出たムーディマンの新作EP、これ良かった。これベスト。もしサンプラーをレディメイドとするならば、いまムーディマンがやってることは、ポップアートというかネオダダに近いんじゃないかな。どっかの雑誌にはムーディマン史上もっともロマンチックな作品と評していたが、なるほどなと思う。夕暮れ時に似合いそうなロマンチックなブラックマシンミュージックである。またしてもの今どき驚きのアナログ限定発売で、いまレコード屋に行ってもどこにも売ってなく、わたしも泣く泣くyoutubeを繰り返し再生するだけですが、ぜひいつか手に入れたい。”ムーディーマンの新作は見つけたら迷わず買う”という、この誓いをあらたに、この夕暮れ時にちょっとだけしんみりとするのであった。